「10時に寝ると肌に良い」は間違いだった?!本当の睡眠のゴールデンタイムとは?
私たちの知っている「睡眠の常識」の中には、長い間広く知られてその後、情報がアップデートされないままになっていることが多く存在します。
これまで当たり前だと思っていたことが、研究を進めてみると間違いが見つかったり、新たな発見によって定説が覆されたりすることは、現代の世界では、実はよくあることなのです。
このコラムでは、睡眠に関する常識の中から「睡眠のゴールデンタイム」という定説について、解説してみたいと思います。 また、睡眠の質を高める方法や意識したい習慣もあわせてご紹介していきます。 |
そもそも10時〜2時といわれている「睡眠のゴールデンタイム」とは?
睡眠は仕事のパフォーマンスだけでなく、幸せの感じ方や心身の健康状態にも大きく影響します。 皆さんは『睡眠のゴールデンタイム』という言葉を聞いたことがありますか?
これまでよくいわれてきたのは、「10時(22時)〜深夜2時の間は、成長ホルモンが集中的に分泌されるから寝ておきましょう」というものです。 この情報によって「肌や代謝のためには10時(22時)には寝なくちゃ」と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし最新の研究結果や睡眠のゴールデンタイムの定義から、ゴールデンタイムは人によって異なることが分かっています。 睡眠中に分泌される成長ホルモンが深い睡眠の時に集中的に分泌されるということは事実なのですが、その分泌のタイミングは10時(22時)〜2時といった「時刻」には依存しません。
それぞれの生活習慣によって睡眠を取るタイミングが違うことから、成長ホルモンが分泌される時間帯も人によって違います。 つまりゴールデンタイムは明確な時間が決まっておらず、人によって異なるといえるでしょう。
本来の「睡眠のゴールデンタイム」の考え方
本来のゴールデンタイムの考え方は寝る時間ではなく、「どのようにして眠りの質を向上させる工夫をするか」がポイントになります。
特定の「時刻」には依存しないゴールデンタイムですが、例えば深夜2時に寝ても、質の良い眠りと十分な時間が実現できていれば、成長ホルモンは特に睡眠の前半でしっかり分泌されます。 「睡眠のゴールデンタイム」を考える上で大切なことは、「何時に寝るか」ではなく「いかにして寝始めの3時間を深くするか」になります。 ここでの3時間を深く眠ることができると「成長ホルモン」が集中的に分泌され、細胞を修復し身体をメンテナンスしてくれます。
眠っているときに分泌される2つの重要なホルモンとは
人間が眠っているときに分泌されるホルモンは2つ。 とても重要なものなので順番に解説していきます。
睡眠ホルモン「メラトニン」人間に備わっている体内時計が生理機能(睡眠、目覚め・体温・血圧・代謝・ホルモン分泌etc)をコントロールしているので、夜になると自然と活動モードから休息モードになって眠くなります。
睡眠にはメラトニンとセロトニンという2つのホルモンが深く関わっていて、特に「メラトニン」は「睡眠ホルモン」と言われており睡眠を促進する作用を持つホルモンです。
朝、光を浴びると脳にある体内時計の針が進み、時計がリセットされて活動モードに切り替わります。
また、体内時計からの信号でメラトニンの分泌が止まります。
メラトニンは目覚めてから14〜16時間程経つと体内時計からの指令が出て徐々に再度分泌が高まり、その作用で深部体温が低下して、休息に適した状態に導かれ眠気を感じるようになるのです。
身体のメンテナンス「成長ホルモン」身体のメンテナンスに大きくかかわっているのが、主に睡眠中に脳下垂体から分泌される成長ホルモン。 身体のあらゆる細胞を再生させる重要なホルモンです。 成長ホルモンがしっかりと分泌されているとさまざまな臓器で行われる代謝を促し、肌や髪にも良い影響を及ぼします。
【成長ホルモンの主な働き】 ●運動などで壊れた筋肉細胞を新しく再生する。筋肉の成長を促す。 ●タンパク質の合成を促す働きがあるため、丈夫で健康的な髪を保つ。 ●コラーゲンなどの美肌成分の生成にも関わったり、日中に受けた肌ダメージを回復させたりして、肌にハリや潤いをもたらす。 ●疲労回復効果。高い免疫機能が維持できるため、風邪をひきにくくなる。 ●脂肪を分解して体脂肪を減少させダイエットにも効果的。
成長ホルモンには、眠っている間にさまざまな細胞を再生したり代謝にかかわったりする作用があります。 睡眠中に成長ホルモンをいかに多く分泌させられるかが健康のカギとなるのです。
睡眠の質を向上させるための方法【衣・食・住】
睡眠の質を高めるために日中に意識できることはたくさんあります。 今回は衣食住で分類して説明していきます。
【衣】皆さんは寝るときに「パジャマ」を着ていますか?
パジャマと部屋着(ルームウェア)は用途が全く違うので別物ですが、もしかすると 「寝るときなんて何を着ていても関係ない」 「最近あまり着なくなったけど処分するにはまだもったいないパーカー、スエット、Tシャツで十分」 「パジャマをわざわざ購入する気にならない」など・・・ パジャマを着ない派の方も多いのではないでしょうか。
実は「パジャマ」という存在を重要視することで睡眠の質を高める効果が期待できるのです。 パジャマは快適に眠るための「寝具」の1つともいえます。
一般的にパジャマの特徴としては、「上下セットの2ピースタイプ」という点が挙げられます。
ボタン付きの前開きのタイプや、上から被って着るプルオーバータイプなどがありますが、いずれのパジャマもパンツとトップスが別になっており、脱ぎ着がしやすいのが特徴です。
パジャマを着るメリットについて詳しく知りたい方は「パジャマの役割って何?」をご覧ください。
【食】1日に3回摂る食事には様々な成分が含まれています。 また、摂取のタイミングや少しの意識で睡眠にアプローチすることが可能です。 代表的なものを順番にみていきましょう。
【カフェインとアルコール】 カフェイン:コーヒーに多く含まれる興奮作用があるカフェインは、通常2時間程度、高齢者では4〜5時間以上身体の中に残るといわれています。 夕食後に飲むものをノンカフェインの麦茶やハーブティーに替える工夫をしましょう。 またチョコレートやココア、栄養ドリンクの一部にもカフェインが含まれているので、注意が必要です。
アルコール:お酒を飲むと良く眠れる…という方は要注意です。 アルコールは睡眠中の尿の量を増やします。 そのため、トイレに行きたくなって目が覚めやすく、睡眠がこま切れになってしまいます。 夕食時の晩酌は日本酒1合、ビール(500mL)1缶、ワインはグラス2杯までを適量とし、寝酒としてアルコールを摂取するのはやめましょう。
【胃に負担がかかるメニューは昼食に】 揚げ物や油っぽいもの:食べた後にすぐ消化されるものは良いのですが、消化に時間がかかるものを食べると、睡眠中に胃に食べ物が残り続けることとなります。 揚げ物や油を多く使ったメニューは、可能な限り昼食に食べるように心掛けましょう。
食べる量:消化に悪いものでなくとも、大量に食べると胃で消化しきれずに残ってしまいます。 普段から暴飲暴食には注意して、バランスの良い量を摂るようにしましょう。
【タンパク質は適量を摂取することが大切】 タンパク質は、肉や魚、大豆などを摂取しないと、アミノ酸が少ない状態になります。 タンパク質を摂取することで身体のインスリンの分泌を促進し、アミノ酸を循環させる働きがあります。 アミノ酸は、セロトニンとメラトニンの両方に関係しているので睡眠に影響を与えます。 特にベジタリアンなどでタンパク質をほとんど摂取しない…というのは注意が必要です。 食事と眠りの関係をもっと知りたい方は「眠りと食事の話し:安眠をサポートする食材とは?」をご覧ください。
【住】寝室環境や寝具選びでポイントになる点をご紹介します。
【温湿度・光で心地よい空間を作る】 室温や湿度を季節に応じて調整しましょう。 暑すぎたり寒すぎたりして体温調節がうまくいかないときは寝つきが悪くなることが多くあります。 また、部屋の明るさは不安にならない程度に暗くしましょう。 朝の光とのコントラストがあるほど覚醒しやすくなります。 寝室は安心できて心の落ち着く場所であることが必要条件ですが、快適に眠るためには寝室の環境を整えることも大切です。
様々な角度からリラックス出来る空間づくりの工夫を見ていき、眠ることが楽しみになる寝室を目指しましょう。
もっと詳しく知りたい方は「ぐっすり眠れる寝室環境:どんなことに気を配ればいい?簡単実践5つの角度からアドバイス!」をご覧ください。
【自分に合った寝具選び】 就寝中の発汗、温度変化に対応できるよう吸湿性・放湿性の良いものに加え、体型に合ったものを選びましょう。 身体のS字カーブ(後頭部〜首・胸、胸〜腰)がバランスよく支えられるものが快眠につながります。
●枕の高さ 起きたときに首や肩が凝っている、胸の筋肉が張るなど筋肉の緊張が取れていないときは、枕と頸椎のカーブが合っていないかもしれません。 好みの高さでも、実は身体に合っていないことも多くあります。 専門店で自分の首のカーブの角度を計測してもらいましょう。 その際は自宅の敷き寝具に近い環境(硬さや素材、沈み込み方など)で計測してもらうのがポイントです。
●敷きふとん(ベットマット)の硬さ 身体に対して、柔らかすぎると腰痛の原因になり、硬すぎると骨があたって痛く感じたり、血流が悪くなってかえって寝つきが悪くなったりする原因になります。 実際に店頭で寝て試したり、短期間のレンタルサービスなどを利用して、適度な硬さを持ち寝返りがしやすい敷きふとんを選びましょう。
睡眠の質を上げるために意識したい習慣
日々の生活の中で意識して取り入れてみましょう。
起床時間を一定にして朝日を浴びる実は、早く寝て早く起きられるようになるには「早起き早寝」を意識して実践することが大切です。 早起きをした結果、早い時刻に眠ることができ、また次の日も早起きができるようになるという習慣がつきやすく、理想的なサイクルが生まれます。 そのために「早起き早寝」を心掛けましょう。
光は体内時計をリセットし、1日をスタートさせるのに絶大な効果があります。 初めは早起きが大変ですが、徐々に楽になって続けていくと習慣化され、朝方になっていきます。 曇の日も雨の日も太陽の光は届いているので、カーテンを開けて窓際に行ったり、ベランダに出ればOK。
朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、夜になるとメラトニンが多く分泌されるようになり、自然な眠気に誘われてスムーズに寝ることができます。
昼寝を取り入れる睡眠時間を少しでもとることが、睡眠不足の解消には大切です。 昼食後や休憩中の短時間の昼寝は効果的で、たとえ数分間でも疲労回復に役立ち、日中の活動効率を高めるとされています。 ただし、長時間の昼寝は逆効果となり得るため、20分程度が推奨されます。
昼寝前にカフェインを含む飲み物を摂取すると、目覚めがスッキリする効果があるのでおススメです。 飲みすぎてしまうと、交感神経が活性化して、眠気が覚めてしまうので、摂取量には注意しましょう。 また、夜の睡眠に影響を与えないよう、午後3時までに昼寝を済ませると良いでしょう。
適度な運動を取り入れる1回の運動だけでは効果が弱く、習慣的に続けることが重要です。 効果として、寝付きがよくなり深い睡眠が得られるようになります。 ただ激しい運動は逆に睡眠を妨げますので、負担が少なく長続きするような早歩きの散歩や軽いランニング、ヨガなどがおススメです。 30分〜1時間程継続して運動することを意識してみましょう。
また、運動するタイミングにも注意が必要です。効果的なのは夕方から夜(就寝の3時間くらい前)の運動です。 就寝の数時間前に運動によって脳の温度を一過性に上げることがポイントです。 そうすると床にはいるときの脳温の低下量が運動をしないときに比べて大きくなります。 睡眠は脳の温度が低下するときに出現しやすくなるので、結果として快眠が得られやすくなります。
入浴時の温度や時間を意識する入浴の睡眠へのアプローチは加温効果にあります。 これは運動の場合と同じで就寝前に体温を一時的に上げてあげることがポイントです。
効果的な入浴時の温度や時間はこちらを参考にしてみてください。
・湯温:38度~40度(ぬるま湯) ・時間:20~30分ほど
42℃以上の熱いお湯で入浴すると、自律神経が活発化して眠りにくくなるため、熱めのお湯なら入浴時間を5分程度にしましょう。 また、寝る直前よりも寝る1〜2時間前に入浴をした方が、体温が下がり、より寝付きが良くなります。
心身ともにリラックスする交感神経に代わって副交感神経が優位になると、心身がリラックスして眠りにつきやすくなります。 寝る際には副交感神経が優位になっているほうが眠りやすいので、寝る前には普段から習慣にしている行動(ルーティン)を行うのがおススメです。 それが入眠スイッチになり、快眠につながっていきます。
ルーティンは基本的にどんなことでもOKですが、例えば ・ぬるめのお風呂につかる(就寝1時間前までに) ・パジャマに着替える ・好きな香りを嗅いだり、寝具にスプレーしたりする ・ノンカフェインのお茶やコップ1杯の水を飲む、 など・・・
自分がリラックスできる習慣を探し、ルーティン化して心と身体をリラックスさせていきましょう。
寝る前のスマホの使用は2時間前までが理想パソコンやスマートフォンの画面から発せられる光であるブルーライトは、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの生成を抑制することで知られています。 そのため、良質な睡眠を確保するためには、ブルーライトを発するデバイスの使用は就寝前の2時間前までが推奨されます。
2時間前が難しい場合は、最低でも就寝する1時間前までには使用するのは避けるようにしましょう。
また、寝床でのスマホ使用や就寝前のテレビ視聴も睡眠の質に悪影響を及ぼすため、控えることが望ましいです。
まとめ
睡眠のゴールデンタイムとは以前は「午後10時から午前2時の間に成長ホルモンが最も分泌される」ため、美肌を目指すなら規則正しい生活を送り、ゴールデンタイムに睡眠をしっかり取るべきであるという説でしたが、本来の考え方は寝る時刻ではなく、「どのようにして眠りの質を向上させる工夫をするか」がポイントになります。
自分の心身を健康に保つために、睡眠の質を上げる工夫をまずは1つからでも取り入れてみましょう。 |
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