室内気候を整える(温湿度、空気、ホコリ)
温湿度
人間の身体は、体温が下がると眠くなるようになっています。
また、正常な睡眠の継続には熱を放射することと深部体温の低下をスムーズに行うことが必要になります。
そのためにベストな室温は夏季26℃前後、冬季約16〜19℃、湿度は50~60%前後が良いとされています。まず寝室に温湿度計を置いてみましょう。
快適な温湿度を保つためにエアコン、加湿器、除湿機を上手く利用しましょう。
夏はエアコンや扇風機の風が、体に直接当たらないようにし、一晩中つけっぱなしにしないことも大切です。
就寝1時間くらい前につけて室内を適温にし、環境に差はありますがだいたい寝付いて2時間程度したら切れるようにします。
冬の寒さで起きにくい時期は、寝るときに暖房を切り、タイマーを起床時間の1時間くらい前にセットするのもよいかと思います。
実は温度で意識したい場所は寝室以外にもう1つあります。
それはふとんの中(寝床内)の温度です。季節と寝室に合わせた寝具とパジャマを選んで、快適な温度に保つことが大切です。
ふとんの中の温度は、33±1℃。この温度をいかに実現して維持するかが「いい眠り」の大きなポイントになります。
空気
寝室の換気は意外に忘れがちです。
リラックスする場所だからこそ、しっかり換気を行ってキレイな空気の中で過ごしましょう。
寝室の空気が汚れていると、睡眠中でも無意識に呼吸が浅くなってしまいます。
呼吸が浅く呼吸量も減ると、一晩しっかり眠ったとしても疲労が解消されず、起床時にだるさを感じやすくなってしまいます。
空気の清潔さを保つためにも空気清浄機で空気中に浮遊するアレル物質を除去して、アレルギー性鼻炎や喘息、アトピー性皮膚炎対策をしたり、サーキュレーターで寝室全体の空気を循環させるのもおススメ。
また、昼間にはなるべく窓を開けて自然の外気を取り込むよう心掛けてください。
外気を取り込む際、これから特に春先の花粉が舞う季節には注意が必要です。
花粉症のひどい方は、ふとんを干すのも気が引けてしまう時期です。
そんな時期には、出来るだけ室内の窓際でふとんを干したり、風の強い日などは天気予報や、花粉情報をチェックして出来るだけ花粉を寝室に持ち込まないように工夫しましょう。
外出先から帰宅した際など、そのまま寝室に入るのはやめて、必ず着替えや入浴をしてから寝室に入るようにしましょう。
ホコリ
日中に活動したときに舞うホコリは、寝静まった後に床から30センチくらいの高さに舞い降りてきます。
床にふとんを敷いて眠ると、このホコリの中で呼吸する事になるので、寝床をベッドにかえるなどの工夫も1つです。
また最近は寝室の床にはカーペットが最適ともいわれています。
繊維がキャッチしたダニやホコリの舞い上がりを抑えてくれ、あたたかさや足触りの良さでリラックス効果もあり、ベッドにかえるのが難しい場合にもおススメです。
また、カーテンはホコリがたまりやすいので、最低でも半年に1回は洗濯するよう心掛けましょう。
寝室レイアウト
質の良い睡眠を取ることが出来るかどうかは、寝室のレイアウトも重要です。
レイアウトによって何だが落ち着かなくなったり、寝付きが悪くなることも。
心を落ち着かせてリラックスできる寝室を作るには、どんなポイントに注意すればいいのかを見ていきましょう。
1 部屋の広さとベッドやふとんの大きさ
一般的には寝室として7畳以上の広さがあることが理想です。
寝室に必要な家具を置き、周りに人が通れるスペースを確保したり扉を開閉するときに邪魔にならないようにしたり、バルコニーがあればそこまでの通路を確保することなどに配慮してレイアウトしていくとスムーズです。
始めから余裕のある広さの場合は別ですが、ほとんどの場合は寝室の広さに合わせてベッドやふとんの大きさを検討する必要があります。
例えば、7畳の広さの寝室でシングルサイズを2つ並べて使おうとした場合、それだけで部屋がいっぱいになってしまい、窮屈な空間になってしまいます。
ダブルサイズを置くなら6畳以上、シングルサイズを2つ並べたり、クイーンサイズやキングサイズを置く場合は8畳以上の寝室がベストでしょう。
2 エアコンの風を直接受けない位置に
暑い夏や寒さの厳しい冬にはエアコンを活用する方も多いかと思いますが、風が直接当たらない位置にベッドやふとんを配置しましょう。
急激に体感温度が変わると目が覚めてしまったり、風を浴び続けていると寝起きにだるさを感じたりして熟眠感が半減し体調不良を起こしてしまうことも。
3 窓やクローゼットの位置
窓からは外気が入り込みやすく、外の冷たい空気が伝わりやすいため頭のすぐ上に窓が来る位置は避けましょう。
またベッドの場合はクローゼットとベッドの両方がストレス無く使えるよう注意が必要です。
クローゼットの扉が開き戸や折れ戸の場合は、扉が可動するためのスペースを確保する必要があるので、クローゼットにベッドを寄せてレイアウトすることは避けましょう。
4 頭部が壁になるように
枕元は壁に接している方が精神的に落ち着き、体調面にも配慮されたレイアウトです。
外気の影響を受けにくくなり快適に寝ることができます。
5 周囲は余裕をもたせる
ベッドやふとんの周囲は、適度なスペースを確保しておく必要があります。
掛けふとんは敷きのサイズより大きく作られているので、十分なスペースがないと掛け布団にシワができてしまい、体に馴染んでくれません。
又、動線を確保する意味でもスペースを確保しておく必要があります。
ベッドやふとんの左右には人が通れるように60cm程度空けておくといいでしょう。
左右にスペースを確保できない場合は、片側はベッドメイクしやすいように10cm程度隙間を空け、もう片方は必ず人が通れる空間を確保するようにしましょう。
6 部屋の扉の真正面には配置しない
ベッドやふとんから真正面に部屋の扉が見えていると、誰かが入ってくる気がしたり、見られているような気になって、落ち着いて寝ることができなくなる場合があります。
自分では気にしていないつもりでも、ストレスを感じていることもあるので、扉を開けるとすぐ正面にベッドがあるレイアウトにしたり、扉のすぐ横にベッドを置くことは避けましょう。
どうしても扉が見えるところにしか置けない場合は、目隠しになるような家具を利用したり、パーテーションを使うなど工夫してみましょう。
理想的なのは、ホテルのように物が少なくシンプルな空間ですが、生活する空間で同じ様に実現するのは難しいのが現状です。
けれど意識してもらいたいのは、極力物は置かないこと!
リラックスして寛げる空間を作るには、部屋が整っていることが大切です。
物が多く、視覚から入ってくる情報が多いと、ゆったりとした気持ちを作りにくくなります。
寝室は、寝るためだけの空間として考えて、極力物を置かないようにしましょう。
音(静けさ)
眠りを妨げる音の大きさは40〜50dB(デシベル)以上といわれています。
50dB以上(エアコンの室外機や、テレビの音、壁のスイッチを押す音など)になると、多くの人が眠りを阻害されるとも。
できるだけ静かな環境が望ましいのですが、全くの無音状態だと逆に不安な気持ちになります。
暗く無音の空間は感覚的な刺激が少ないので、ささいな音が気になったり、不安や緊張を感じたりして、寝つきが悪くなる場合もあるので注意が必要です。
そよ風に揺れる木の葉の音や、静かに保たれている図書館ぐらいの音(30〜40dB)が心地よく眠るための理想の静けさといえます。
寝る前に好きな音楽を聴くのは良いのですが、人の声は眠りを妨げやすい音なので、音楽のかけっぱなしやラジオのつけっぱなしはせずに寝る前には忘れずに消しましょう。
また、テレビを壁にぴったりとくっつけると、隣の部屋に音が響きやすいので、壁からは10㎝以上離すと◎。
壁際にタンスや本棚を置くのも、一定の遮音効果が見込めます。
マンションなどで、隣家から伝わる生活音などには、遮音・吸音材を使うのが効果的。
外からの騒音が気になる場合は、内窓をつけて二重窓にすれば、大きく軽減できる上に断熱性アップにも有効です。
手軽な方法としては、遮音カーテンなどを使うのも良いでしょう。
明るさ(照明、光)
照明
リラックスしたいときや就寝前約1~2時間前からは、やや赤みのある100~150ルクス以下の照度の照明がおススメ。
これを斜めから浴びるとゆったりとしたくつろぎ空間を演出できます。
寝る前にはゆっくりとした落ち着いた時間が大切です。
そのためには明るさを少し抑えた心落ち着く夕暮れ時のように赤みを帯びた光の照明が適しています。
寝室以外の部屋でも、寝る前は照明をやや暗め(100~200ルクス程度)にし、テレビやパソコン、スマートフォンの使用を控えて、リラックスしてから寝室に向かうのが、安眠の秘訣です。
睡眠中の照明は豆電球ひとつくらいの薄暗さにするのが◎。薄暗く、ものの形がうっすらとわかる程度の明るさです。
真っ暗を好む方もいますが、真っ暗闇の空間は心理的な不安を感じるため基本的にはNG。
また、夜中にトイレに行きたくなった場合も危険なので、豆電球+間接照明や人の動きを感知して点灯するフットライトもおススメです。
光
朝、心地よく目覚めるには、適度な光が必要です。
窓の位置を考えてベッドやふとんを配置したり、カーテンを活用して、ほどよく朝日が入ってくるように工夫しましょう。
遮光機能のあるカーテンを使う場合は、遮光性が最も高い遮光等級1よりは、ある程度は光を通す等級2、3のものを使うことをおススメします。
リラックス(香り、肌触り、色)
香り
神経を落ち着かせる効果のあるラベンダーやベルガモット、カモミールは緊張を和らげ、心の疲れを癒します。
スギやヒノキの香りの成分であるセドロールは交感神経をおさえて寝つきをスムーズにしたり夜中に目が覚めたりするのを改善する効果があると報告されています。
アロマを焚くのも1つですが、面倒な場合はフレグランスミストで手軽に香りを取り入れることもおススメです。
また、意外な香りにも気持ちを落ち着かせる効果があるのです。
それはコーヒー! 覚醒効果のイメージが強いコーヒーですが、香りを嗅ぐだけならば睡眠を促す効果があり、その時の脳波を調べると、リラクゼーションの指標であるアルファ波が多く出ていることがわかっているそうです。
しかし、豆の種類によってその効果は異なり、グアテマラとブルーマウンテンはアルファ波を増やし、気持ちが落ち着いて眠りやすくなるとされているのでおススメです。
くれぐれも香りを嗅ぐだけにして飲むのは翌朝の楽しみに取っておきましょう。
肌触り
睡眠時のリラックス効果を高める役割として寝具に掛けるカバーやリネン、身に着けるパジャマの素材にも目を向けてみましょう。
おススメなのは、綿、ガーゼ、麻などの天然素材のものです。
それぞれのポイントを見ていきましょう。
【綿】
コットンと表記されることもありますが、吸湿性が高く生地がしっかりしているのが特徴。
綿には表面に凹凸があるワッフルタイプと、柔らかさを重視したベロアやニットタイプなど何種類かあります。
同じ綿素材でも仕上がりによって、肌触りが大きく異なるため要注意。
通気性を重視したい方はワッフルタイプ、ぬくもりを大切にしたい方はベロアやニットタイプがおススメです。
【ガーゼ】
生地の薄さと柔らかさが抜群で、甘撚りの糸でゆるく織られており、肌触りがなめらかで肌への刺激が少ないのが特徴です。
乾燥肌の方や敏感肌の方、また赤ちゃんの布団カバーにもよく使われている素材で季節を問わず使用できます。
通気性がよく吸水性にも優れているのがポイント。
空気の層ができやすいため、冬場はあたたかさをキープでき、オールシーズン活躍します。
【麻】
吸湿性と通気性に非常に優れています。
汗をかいてもベタつきにくく、さらっと使えるのが特徴で、リネン素材は丈夫で長持ちするのも魅力。
使うほどに肌になじんでいきます。発散性や通気性が高いので、洗濯した際に乾きやすいのも◎。
色
細胞は色を認識します。一般的には青色は眠りを誘う色といわれています。
また、ふとんカバーやカーテン、壁紙などは自然界にあるような肌の色を感じさせるベージュ系、植物を感じさせるグリーン系、土や木を感じさせるブラウン系が心理的に落ち着きます。
ただし好みもあるのでご自身が”落ち着くなぁ”と感じる色が◎。
どんな色味でも明度や彩度の高くない淡い色がおススメです。
季節によってカバーなどは、夏は清涼感を演出してくれる明るい寒色系が、冬は体感温度を高く感じさせてくれるオレンジや赤などの暖色系のように使い分けることも効果的です。
まとめ
いろいろな角度から眠りやすい寝室環境を考えてみましたが、1番は自分が心地よく過ごせる空間をつくることが大切です。
そのためにポイントをおさえ、簡単なことから少しずつ実践してみてはいかがでしょうか。
人間の3大欲求の1つとして大きな要素を占める「睡眠」。
他人と分かち合うことが出来ない自分だけのパーソナルな時間なので、この時間の質を高めて明日の元気に繋がるように、まずは寝室という空間に目を向けて充実させてみることをおススメします。
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