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寝姿勢とは?

寝姿勢とは、文字の通り「寝ている時の姿勢」のことです。
睡眠には様々な役割がありますが、大きな役割を担っている「疲労回復」という観点からみると正しい寝姿勢で眠ることはとても重要です。
日中の姿勢は意識的に正すことができますが、寝ている間は無意識です。
そのため、寝姿勢が悪くなっていると疲れがなかなか取れず、さらに痛みが生じると不快感によって途中で起きてしまったり、眠りが浅くなったりと睡眠の質の低下を引き起こす恐れもあります。
寝姿勢の大切さ
日々の生活で私たちはスマホが手放せなくなっていたり、パソコンや運転の仕事で座りながらの作業が多かったりと常に姿勢(首〜腰にかけての背骨)に負担がかかっています。
こうした状態が続くと首や肩・背中の筋肉が緊張し続けて、首こり・肩こりや腰痛の原因にもなってしまいます。
この日中の疲労を回復させるためにも睡眠中に姿勢を整えていくことが大切です。
人間は正しく立っている時に背骨がなだらかなS字状にカーブしています。
これは直立姿勢を楽にするためのものですが、横から見ると「耳、肩、腰、ひざ、くるぶしが一直線に並んでいる姿勢」です。
理想的な寝姿勢は、仰向けになってこの姿勢が自然に保たれている状態のことを指します。
なぜ仰向けかというと敷き寝具に接地する身体の面積が1番広いため、圧力が均等に分散されるからです。
正しい姿勢を保つことで身体全体の緊張を和らげ、ストレスが軽減します。
また、横向きの場合でも、背骨と床(マットレスの場合はベッドフレームの床板)部分が真っすぐに並行している状態が理想的です。
背骨を真っすぐに保つことで、首や肩にかかる負担を抑えます。
寝姿勢の主な種類
寝姿勢を正しく意識することで局部的にかかる身体の負担を和らげ、痛みや体調不良などを引き起こす原因を軽減することが可能です。
正しい寝姿勢を考える上で重要なポイントは2つあります。
① 無理のない体勢で呼吸がしやすい状態であること
② 寝返りが打ちやすいこと
寝姿勢は一般的に「仰向け寝」「横向き寝」「うつ伏せ寝」と大きく3つのタイプに分けられます。
順番に特徴や良い点・懸念される点などをご紹介していきます。
【仰向け寝】
仰向け寝は3つの寝姿勢の中で最も安定した姿勢であるため、背骨が自然と真っすぐの状態になり、身体の歪みが生じにくくなります。
また、体圧が均等に分散されるので身体への負担が軽減され、血流が促進されることで疲労回復を助けます。
一方で仰向けで顔を上に向けると、重力により舌の根本が下がりやすくなるので、空気が通る気道を狭くしてしまい、呼吸がしにくく感じる、いびきをかきやすくなるといった可能性があります。
また、腰痛持ちの方や、猫背のひどい方は、場合によっては症状が悪化してしまう場合もありますので注意が必要です。
●仰向け寝の良い点
・体圧分散
・身体の歪み防止
・疲労回復促進
●仰向け寝の懸念される点
・いびきをかきやすくなる
・腰痛などの悪化
【横向き寝】
横向き寝は舌が落ちることが少なく、気道をふさぐことがないため呼吸がしやすくなり、いびきをかきにくくなります。
また、横向きは腰の角度を自由に調整することができ、楽な姿勢をとりやすいので腰痛持ちの方に良い場合があります。
妊婦の方もお腹の重さが身体を圧迫することなく、体勢も安定してリラックスして良く眠れるようになります。
さらに横向きで寝ると食べ物の消化がスムーズになり、胃腸に負担をかけないともいわれています。
一方で、横向き寝の状態で長く寝ていると敷き寝具との接地する身体の面積が小さいので、局所的にかかる負担が大きくなります。
すると血流が悪くなり、肩や耳に痛みが出たり、腕や手がしびれたりします。
さらに家族やパートナーと一緒の敷き寝具で寝ていたり、並んで寝ていたりすると同じ向きばかりでくせがついてしまい、身体の歪みも生じやすくなります。
●横向き寝の良い点
・いびきをかきにくい
・腰痛持ちの方、妊婦の方にもおススメ
・消化がスムーズになり、内臓に負担がかかりにくい
●横向き寝の懸念される点
・身体への局所的負荷が大きい
・痛みや歪みの原因になることがある
【うつぶせ寝】
うつぶせ寝の姿勢も横向きと同様に舌根が下がりにくいので気道が確保され、腹式呼吸により酸素をより多く取り込むことができるので、血行が良くなります。
また、うつぶせ寝をすることでお腹が温められ、精神的に安心するという方もいらっしゃいます。
一方でうつ伏せ寝は首を横に向けて押さえつけられるような姿勢となるので、下に向けている顔やあご、首に体重がかかりやすくなります。
そのため顔の輪郭や歯並びに歪みが生じる可能性があったり、首こりや寝違えの原因になることがあります。
また、うつぶせ寝は長時間枕に顔が接地するので枕カバーが汚れていたり、肌を刺激するような素材を使っていたりすると、肌荒れの原因になります。
さらにうつぶせの姿勢は、胸や肋骨に体重がかかります。
胸部を圧迫されることによって息苦しさを感じたり、場合によっては嘔吐してしまうことも考えられます。
●うつぶせ寝の良い点
・呼吸がしやすく、腹式呼吸になりやすい
・精神的にリラックスし、安心する
●うつぶせ寝の懸念される点
・顔の輪郭の歪み、首の痛み
・肌荒れ、乾燥肌
・胸部圧迫による息苦しさ
・嘔吐
【お悩み別】おススメの寝姿勢

腰痛が緩和する寝姿勢
おススメの1つめの寝姿勢は「横向き寝で足の間に枕やクッションを挟む」です。
こうすることで腰と足の高さが水平になり、腰の痛みが緩和されるといわれています。
ポイントとして、身体を少し丸めた状態で横になるようにしましょう。
2つめの寝姿勢は「仰向け寝で両膝を曲げてクッションを足の下に置く」です。
仰向け寝の方が慣れている場合は、この方法で腰が少し楽になることがあります。
腰の反りをつくらないように両膝を曲げてクッションなどでリラックスしやすいポジションを探すことがポイントです。
上記2つの方法は寝入る際の寝姿勢と捉えていただき、同じ姿勢で長時間寝ていると身体も緊張してくるので、適度に姿勢を変えて必要な寝返りをきちんとすることも腰の痛みの緩和につながります。
またうつぶせ寝は腰が常に緊張状態にある姿勢なので、症状を悪化させてしまうことがあるため避けるようにしましょう。
肩こりになりにくい寝姿勢
おススメの寝姿勢は「仰向け寝」です。
仰向けに寝ることで肩の周りの筋肉がリラックスし、血流も良くなるので自然とこりがほぐれやすくなります。
さらに肩こり解消・防止には枕の高さが合っていることも重要です。
頭を乗せた時に敷き寝具と首の角度が約5度になるのが理想的といわれています。
肩や肩甲骨が敷き寝具にしっかりついているかどうかもあわせて確かめましょう。
いびきに効果的な寝姿勢
おススメの寝姿勢は「横向き寝」です。
重力の影響で舌が喉の奥に下がってきて、周辺の筋肉も緩むので気道が狭くなります。
この狭い気道を空気が通るとき、周辺の粘膜を振動させるので音が出るのが「いびき」です。
横向きで寝ると気道がふさがれるのを防ぐことができるため、いびきの軽減に効果的です。
肥満や扁桃腺の肥大などによって気道が狭くなるという人も横向き寝がおススメです。
また、その時枕の高さや敷き寝具も重要です。
それぞれの体格や骨格に合ったものを選び、横向き寝になっても肩が圧迫されないものを使用するようにしましょう。
逆流性食道炎を起こしにくい寝姿勢
おススメの姿勢は「左側を下にして横向き寝」です。
食べ物は胃腸を通る時に、左から右に流れていき、右側を下にして寝ると食べ物が腸に向かいやすくなりますが、一方で構造上の理由から、逆流性食道炎がおきやすくなります。
左側を下にして横向きに寝ると胃のふくらみの部分に食べ物が収まるため、逆流性食道炎がおきにくくなります。
また、食後すぐに寝ると、胃腸の消化機能が弱まり、消化不良の原因になるため夜寝る3時間前には食事を済ませておくのが理想的です。
【タイプ別】おススメの寝姿勢

猫背の方に最適な寝姿勢
おススメの寝姿勢は「仰向け寝」です。
仰向け寝が猫背解消に効果的とされる理由は、最も自然な姿勢の寝方だからです。
さらに首の下まできちんと枕を入れることを意識すると、より正しい姿勢で寝ることができます。
首の下の枕によって首がサポートされると、首周りの筋肉が緩み、首の骨が正しい位置に戻りやすくなるため、猫背の解消が期待できるといわれています。
反対に横向きで寝ると肩が前に倒れてしまい、巻き肩になる可能性があります。
横向きに寝続けることで、猫背の原因の1つとされる巻き肩の癖がつきやすくなってしまいます。
そうなることで猫背解消の妨げになるので注意が必要です。
反り腰の方に最適な寝姿勢
おススメの寝姿勢は「横向き寝で軽く背中と膝を丸める」です。
反り腰は、反ってしまっている部分を軽くでも矯正してあげられる寝姿勢が腰に良いとされています。
腰を反らすのではなく、丸めて寝るためには、横向き寝がよく、さらに膝を丸めた方が背中も丸めやすくなります。
逆にうつぶせ寝や、仰向け寝で腰の下にバスタオルやクッションを挟む寝方は反り腰を悪化させてしまうので注意が必要です。
胃下垂の方におススメの寝姿勢
おススメの寝姿勢は「右側を下にして横向き寝」です。
胃下垂の方は右側を向いて横向き寝が良いとされています。
一般的に、右側を下にして寝る方が、食べ物が腸に流れやすくなるため、消化不良がおきにくいなどのメリットがあります。
さらに満腹時に少し休むという目的でも、健康な消化器機能を持っている方や胃下垂の方は上記の通り右側を下にして横向き寝がおススメです。
反対に左側を下にして横になると胃の出口が下の方向に向かないため、胃の中の食べ物が流れにくくなり、胃の中に消化中の食べ物が胃に残り続け胃もたれの原因になってしまう可能性があります。
また、食べてすぐに休む場合は胃腸の消化機能が弱まり、消化不良の原因になるので時間を30分〜1時間と決めて完全に眠ってしまわないように注意しましょう。
理想的な寝姿勢の保持には枕や敷き寝具が重要

腰痛が緩和する寝姿勢
寝る姿勢は寝具によって大きく影響を受けます。
理想的な寝姿勢を保つには、自分にフィットする寝具を使うことがとても大切になります。
【枕】
硬さや、高さが合っていないものだと背骨の自然なカーブを妨げ、背骨のバランスが悪くなってしまいます。
頭〜首を支えてくれる弾力性があり、自分の体型に合った安定感のあるものを使用するようにしましょう。
相性の良い枕の条件はこちらでご紹介しています。
【敷き寝具】
敷き寝具の場合、柔らかすぎると腰やお尻の重い部分が沈み込んで寝姿勢のバランスが悪くなってしまいます。
反対に硬すぎると肩やお尻といった突出した部分で局所的に身体を支えることになるので、その分荷重がかかり、腰痛の原因にもなってしまいます。
実際に横になってみてご自身の骨格や体格にフィットしたものを選ぶのがベストです。
「理想的な寝姿勢ができて圧迫感がない状態」を実現するためには2つのポイントが重要です。
①敷き寝具が身体にフィットし、かつ沈み込みすぎない体圧分散性があること
②適度な弾力があり、寝返りがスムーズに行えること
フィット感と反発性が両立している敷き寝具がおススメです。
理想的な寝姿勢は「仰向け寝」では立っている姿勢のまま横になった状態、「横向き寝」では首〜背筋〜腰が真っ直ぐに伸びている状態のことをいいます。
今使っている敷き寝具が合っているか確認したり、これから新しく購入を考えている場合には
・背中の隙間が埋められること
・腰やお尻が沈み込み過ぎない
・寝返りがしやすい
かどうかを判断の目安として参考にしてみてください。
寝入る際の寝姿勢が自分にあっているのか意識することはとても大切ですが、眠ってしまうと一晩中同じ姿勢を保ち続けることはほぼ不可能で、寝返りなどの影響で姿勢は変化していきます。
逆に寝返りができず、睡眠中に同じ寝姿勢を長時間続けるのは身体に負担がかかります。
それを防ぐために、私たちが無意識に行なっているのが寝返りです。
一般的に人は一晩に約20〜30回寝返りをするといわれていますが、寝返りをすることで体圧が同じ箇所に集中することを防ぎ、血流の流れを促進させます。
また、寝返りには寝床内気候の調節や身体のこりや歪みをリセットさせる効果もあるといわれており、質の良い睡眠に大きな役割を果たしています。
そのため寝姿勢には、寝返りをスムーズにうてる寝具を使用することも重要なポイントになります。
まとめ

日中だけでなく、寝ているときも自分のコンディションや悩みに対して有効な寝姿勢を知り、意識することが大切です。
寝姿勢が悪いと、骨や筋肉、内臓への負担が増し血行やリンパの流れが滞ってしまうので、結果として、睡眠中でも身体が緊張状態でリラックスできず、眠りが浅くなったり、睡眠の質の低下につながってしまいます。
ご自身にあった寝姿勢はどれか考え、実践してみることで睡眠の重要な役割の1つである「疲労回復」の効果を最大限に高めて、日中に頑張った脳や身体を充分に休息させましょう。
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