動物たちの眠りにはどんな特徴がある?知ると面白い他の生物の睡眠事情とは?!
私たちが毎日当たり前に行っている「睡眠」。 人間だけでなく、多くの動物にとっても眠ることは大切な習慣であり、生きていく上で欠かせない時間です。 ただ、自然界に生きる生物といってもかなりの種類や数が存在しているので、全ての睡眠事情を正確に確かめることはできませんが、人間以外の動物のほとんどが様々なやり方で休息をとっていることは明らかになっています。
日頃私たちが意識するのは人間の眠りですが、他の動物たちの眠りの特性や特徴を知ることで新しい発見があるかもしれません。
このコラムでは様々な生物の睡眠事情をご紹介していきます。 |
人間と動物、それぞれの睡眠の役割とは
人間は、身体と脳の疲労を休めてエネルギーを回復させ、免疫力を高めるために眠ります。 また、睡眠には記憶の整理や必要な情報のアップデートをしたり、不足してしまうとメンタル数値や幸福度に直結するという大切な役割があります。 基本的には夜、1回続けて深く長く眠るという極端な「単相性睡眠」が人間の特徴です。
動物も休息のために眠りますが、身体の大きさや必要なエネルギー、食物の消費量、食物連鎖の中での位置、生息地などによってその性質や役割は異なります。 共通していえるのは、人間以外のほとんどの哺乳動物は1日に何度も寝たり起きたりする「多相性睡眠」というスタイルだということです。 動物の種類によって昼間寝ている又は夜寝ているという特徴はありますが、連続して何時間も眠ることがないので、一見眠りが浅いように見えます。
実は多くの哺乳類(鳥以上とされることが多い)は睡眠の深さの段階もあり、レム睡眠・ノンレム睡眠も明確にあらわれているそうです。 生物の種類によってその周期は変動がありますが、場合によっては動物たちも夢を見ることもあります。
さらにミツバチは、人間と同様に休んでいる間に長期記憶に情報を加えていて睡眠=学習の時間として認識されています。
人間と動物、「眠り」というカテゴリーで考えてみると共通点もあることに驚きます。 一方で、人間は多くの人がふとんやベッドで夜まとめて眠る「単相性睡眠」が常識ですが、動物たちはそれぞれの眠りのパターンや特徴があります。 次の項目で詳しくみていきましょう。
動物の眠りは食性によって特徴がある
動物の眠りの特徴を考える際に、意外にも思えるかもしれませんが、影響している大きな1つの要因は「食性」にあるのではないかといわれています。 身体の大きさや構造はそこまで共通項目がなく、眠るスタイルも様々です。 ここでは動物園で見られる私たちに馴染みの深い動物を例にしてみましょう。
草食動物大型草食動物の代表的存在であるキリンやゾウは睡眠時間が短いことが報告されています。 理由としては2つあります。 1つ目は、草食動物が主食とする草や葉は、肉などと比較すると食物としての熱量や栄養効果が低いので、たくさん量を食べることが必要になります。 多くの時間を草や葉を探したり、1日の大半を食べることに費やさなければならないので、寝ている暇がないのが現実です。 2つ目は、野生下では睡眠中に肉食動物に襲われるリスクもあるので、これも草食動物の眠る時間が短くなる原因なのです。
【1日の合計睡眠時間】 ●キリン・・・30分~1時間程度 ●アジアゾウ・・・2~3時間程度 睡眠の取り方は1〜5分程の短時間睡眠をたくさん繰り返すことが多いそうです。
【寝る時のスタイル】 ●キリン・・・お腹を床に着けて座る姿勢で、長い首を折り曲げ、身体を小さくたたんで寝ます。 動物園のような環境では、外敵がいないと分かっているので座って寝ることが多くなります。 ●アジアゾウ・・・立ったまま寝ることが多いです。 身体が大きくなればなるほど横になって寝ると、起き上がるまでに時間がかかるので、襲われるリスクが大きくなって危険なため、野生下ではほとんどが立ったまま眠ります。 飼育下では横になることもありますが、子どもや若いゾウの方がその確率は高いです。
キリンもゾウも眠るときにしっかりと目を閉じないで常に薄く開いた感じで眠っているようです。 草食動物は音にも敏感で、寝ているときも絶えず神経を張り巡らせているのです。
雑食動物雑食動物であるクマの睡眠は年齢と共に変化する傾向があります。 ヒグマやアメリカグマは歳を取るにつれて睡眠時間が長くなる傾向があり、特にヒグマは、年齢を重ねると行動や寝姿が人間に似てくるといわれています。
【1日の合計睡眠時間】 ●ヒグマ、アメリカグマ(若い頃)・・・8時間程度 ●ヒグマ、アメリカグマ(歳を取った頃)・・・12~15時間程度
【寝るときのスタイル】 仰向けで寝転がったり、うつ伏せになったりします。 他のクマの身体に頭をのせたり、岩を枕替わりにしたりなど、その様子は人間にそっくりです。 木登りが得意なアメリカグマは、子どもの頃には木の上でも平気で眠ることがあります。
また、クマといえば「冬眠」というフレーズが思い浮かぶ方もいるかと思います。 冬眠とは冬の間、不活発な状態になることです。野生のクマたちは食べ物を取ることができない冬の間、体温を下げて動かず、眠ることでエネルギーの消費を減らし、食べる、飲む量を減らしています。 ヒグマの場合、冬眠は少しの物音でも起きてしまうような浅い眠りで、巣穴にこもっているだけのように見える様子から「冬ごもり」と呼ばれています。 ヒグマは、春がくるまでの3〜4か月もの間、ずっと浅い眠りの状態で、何も飲まず食わずで排泄もためており、その間に出産をするのです。 本能に驚かされますよね。
一方で動物園のクマたちは、一般的に冬眠はしないものの、やはり冬は眠くなり、食欲も減る傾向にあるそうです。 ただ、冬でも毎日食べ物があるので冬眠する必要はないみたいですね。
肉食動物肉食動物の王様、ライオンの睡眠時間は長めです。 理由としては草食動物と反対の要素があげられます。 栄養価の高い肉を食べる肉食動物は、1回捕食してたっぷり食べてしまえば、食べ物を探し回る必要がなくなります。 特にライオンやトラなどの大型肉食動物は、野生下で外敵に襲われる危険も少ないため、睡眠時間が長くなります。
【1日の合計睡眠時間】 ●ライオン・・・15時間~18時間程度 飼育下のライオンは目をつぶってしっかりと眠ることが多いようです。 野生では狩りはメスの仕事なので、オスはメスよりも長く眠っていることもあります。
【寝るときのスタイル】 ネコ科の大型肉食動物ですが、群れを作って暮らすライオンは寝るときも群れでいることが多いようで、1か所にみんなでかたまって寝ていることが多いといわれています。 また、夏はお腹を見せてダイナミックに眠ったり、冬は小さく丸まって眠るなど季節によっての寝相の変化もみられます。
例外も?!コアラがロングスリーパーな理由とは
前項で食性に準じて睡眠に特徴があることをご紹介しましたが、実は例外もあります。 草食動物でありながら、睡眠時間が最も長い動物はコアラといわれています。 その睡眠時間は、なんと1日22時間程になることも。
コアラの睡眠時間が長い理由については諸説ありますが、ユーカリを主食として食べていることが関係しているという説が有力です。 ユーカリの葉には青酸カリ系の毒素が含まれています。 コアラの盲腸には毒素を分解する酵素が存在するため、毒素があるユーカリの葉でも食べることができます。 これを1日に500g以上食べ、水分もここから取っています。
しかし、解毒のためにエネルギーを必要とするので、コアラは長時間眠り続けなければならないとされています。 また、ユーカリの葉は油分や食物繊維が多く含まれるので、消化吸収のために時間がかかります。 他にもユーカリの葉はエタノールが発生するという性質がありますが、このエタノールが神経を麻痺させて眠気を誘発するといった理由も考えられています。 さらにはユーカリの葉には栄養が少ないので体力を温存しなければならないなど・・・
こうやって考えていくとユーカリの葉をなぜ主食としているのか疑問に思いますが、コアラにとっては味がとても美味しいとか香りが良いとかプラスの側面があると想像するようにしましょう。 コアラは食事も眠るのも木の上です。 大好きなユーカリの葉といつも一緒ですね。
イルカやクジラは脳の半分で眠ってる?!
海にすむ動物は水中での生活にあった眠り方をしています。 イルカやクジラは、外敵から身を守るために水の中を泳ぎ続け、浮上して空気を吸うためには常に警戒心を持つ必要があります。 そのために、イルカやクジラは半分眠っていて、半分起きているような状態を保つことができます。 多くの生物の脳は左右に分かれていますが、片方は起きて、開いている片目で周囲を警戒し、緊急時にすぐに行動できるようにしているのです。 これを「半球睡眠」といいます。 「半球睡眠」をとる動物では大脳皮質の半分は起きている状態なので、外部環境に注意を払いながら安全に眠ることができます。
「半球睡眠」の時は、寝ている脳の反対側の眼が閉じているので、起きている脳の方の反対側の眼が開いています。 水族館のイルカが片方の眼を閉じているときはウィンクではなく「半球睡眠」のときなのです。 しかし、保護された飼育環境で生活していると「半球睡眠」が減るともいわれています。 他にも「半球睡眠」をしている代表的な動物は渡り鳥です。 アマツバメ、イソシギ、カモメなど、何万キロも飛行する渡り鳥たちは、何日間も眠らないで飛び続けるわけにはいかないですが、両半球とも睡眠状態になると落ちてしまったり、群れではお互いにぶつからないように距離を保つ必要もあるので飛びながら細かく「半球睡眠」をしているといわれています。
興味深い研究結果として、野生の半球睡眠をしている動物にはレム睡眠がほとんど見られないと報告されています。 レム睡眠が少ない理由はまだ明らかになっていないのですが、必要最小限のノンレム睡眠で脳に休養をとらせている可能性が高いのではと推測されます。
虫の睡眠はどうなっているの?
昆虫はまぶたがないので、目を開けたまま寝るため、いつ寝ているのか判断が難しいですが、静かに動かないときが睡眠のようです。 昆虫の種類によって差があるというよりは、人と同じく個々の生活環境により異なるので、この昆虫は何時間寝ると一概に定義することはできないのです。
実験された例として、ショウジョウバエでは1日の70%程度の時間をじっと動かない状態で過ごすことがハエの睡眠と考えられているそうです。 検証された睡眠の定義は「一定時間の活動休止(10分〜30分程が1つの単位)」や「刺激に対する反応性が落ちる」こととされ、実験で強い刺激を与えて睡眠状態を妨害すると、その後の睡眠状態が伸びたそうです。 ハエも人間と同様で夜間に眠ることが多いといわれています。
ミツバチなどは睡眠不足の時には蜜を集める作業やハチ同士の情報交換に使う尻ふりダンスが雑になり、よく寝たミツバチの作業やダンス程正確ではなかったという報告もあります。 昆虫も睡眠をしっかりと取ることで快適な生活を送ることができるということがいえますね。
アリやミミズなどは地下で眠ります。 働きアリたちは短い睡眠を何度も繰り返しており、その回数は1日に250回程になることも・・・ それに対して女王アリは9時間程度ぐっすりと地下で眠るそうです。 ミミズは地下で丸まって眠り、地面が乾くと眠りに入ることが多いとされています。
また、カブトムシなどの夜行性の昆虫は 樹液をさがして暗くなってから動きまわるので、朝になると森や林の落ち葉の下にもぐって眠ります。
気になる虫の睡眠について詳しく調べてみるのも面白いですね。
身近なペットの睡眠事情は?
大切な家族として犬や猫を飼っている方も多いのではないでしょうか。 人間は平均して1日の約1/3を睡眠に費やしています。 それに対し犬や猫は年齢や個体差もありますが、大まかに1日の約2/3を寝て過ごします。 それぞれの睡眠はどうなっているのかご紹介していきます。
犬●睡眠時間 犬の睡眠時間は1歳までは18〜19時間程、1歳を過ぎた成犬期では、犬の平均睡眠時間は12〜15時間程といわれています。 小型犬に比べ大型犬の場合は、さらに多くの睡眠を必要とします。 老犬になるとまた幼い頃と同じくらい眠るようになります。
●レム・ノンレム睡眠の割合 レム睡眠(脳が起きている浅い眠り)80%、ノンレム睡眠(脳も眠っている深い眠り)20%といわれています。 その理由としては野生時代の名残りの説が有力で、犬は寝ているときに外敵に襲われる危険があったため、すぐに起きて自分の身を守れるよう、眠りが浅かったことが要因と考えられています。 夢を見るのはレム睡眠の時なので、眠っている愛犬が突然吠えたり、フンフンと鼻を鳴らしたり、足をバタバタさせるなどの行動があった場合は何か夢を見ている可能性が高いといえます。
●豆知識 犬の寝姿勢で気持ちが共有できるかもしれません。愛犬の寝姿をみて参考にしてみてください。 ・丸くなっている 一般的な寝姿です。身体を丸めることで内臓を守り、寒いときには体温を逃さないようにしています。 ただ、緊張しているときもこの姿勢を取るので身体のこわばりなど観察してみましょう。 ・あお向け 急所であるお腹を見せる無防備な姿で、非常にリラックスした状態です。 ・横向き 楽な姿勢で、リラックスした状態です。暑いときは足を広げていることもあります。 ・うつ伏せ すぐに起き上がれる体勢なので、周囲を警戒しているときに多い寝姿です。
猫●睡眠時間 猫は1歳までは多いと20時間程寝て、大人になってからも14〜16時間近く寝ます。 所説ありますが名前の由来が「寝子」からきたという説があるのも納得できます。 猫も歳を重ねると睡眠時間が長くなります。
●レム・ノンレム睡眠の割合 警戒心が強い動物である猫は深く眠る時間ノンレム睡眠が短く(約20%)、睡眠時間の大部分は眠りが浅いレム睡眠(約80%)です。 レム睡眠時は夢を見やすく、眼球がよく動くので、眼球と連動するヒゲが動いているときは夢を見ている可能性が高いといえるでしょう。 また、寝言をいったり、足をフミフミするような仕草もそれは夢を見ているサインかもしれません。 浅い眠りが多いので、誰かが近づいてきたり、物音がしたりしたら、すぐに目を開け、周りの状況を確認してから再び眠りに戻ることがあります。 「もしかして起きていた?!」と感じるほど機敏に動く猫もいますが、これは浅い眠りで周囲の変化にすぐに反応できるようにしているためです。
●豆知識 雨の日の猫は、晴れの日以上に良く眠ると感じたことはありませんか。 昔狩りをしていた本能は残っているので、視界も悪く狩りには適さず、さらに身体が濡れて体温を奪う雨に対しては、猫はもともと苦手意識を持っています。 そのため、雨の日は極力動かず、じっとしていて寝ることが多くなるのです。
まとめ
たくさんの動物の睡眠を知ることで驚きや面白さがあります。
野生動物は厳しい自然をくぐり抜けていくために、何らかの形で眠り、休息をしながら過ごしているということが、睡眠が生命にとっていかに重要であるかを物語っていると感じます。
私たち人間と同様、動物たちにも穏やかで安心して眠り、明日への生きるパワーになる睡眠時間を過ごして欲しいですね。 |
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